復帰・沖縄を語るを
知るための10冊
選定書籍一覧
(諸見里 道浩・選)
1969年11月、日米首脳は72年の沖縄政権返還に合意した。米軍基地はそのままに、安保条約と平和憲法が待つ日本へ帰る。祖国と戦後占領国の決定をどう判断すべきか。復帰運動は返還協定反対を叫び、反戦反基地へ舵を切る。喜びではなく、復帰への不安と憤りが沖縄社会を揺さぶった。
そのような時代に「沖縄を語る」多くの本が刊行され、沖縄の筆者たちは自らを賭けて書きすすめた。復帰50年、新しい書き手が加わり模索と挑戦は続いている。

諸見里 道浩 (もろみざと・みちひろ)
1951年、那覇市生まれ。ジャーナリスト。
沖縄タイムス社元論説委員長、編集局長。沖縄対外問題研究会会員。
著者『新聞が見つめた沖縄』(2021年、沖縄タイムス社)。


1939年生まれの中屋は、沖縄戦を体験し、1959年宮森小米軍ジェット機墜落事故で姪の死を見た。沖縄の不条理を抱え込んだまま26歳で命を絶った。「名前よ立って歩け」「最後のノート」などの詩や姪の死を綴った作品群で自らと沖縄を語っている。日誌、詩、評論などを収録した遺稿集。

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仲宗根は東京国会前の60年安保闘争の集会で誇らしげな報告を聞く。「訪日は阻止されました。卑怯なアイゼンハワーは沖縄に逃げ去りました」。沖縄への上陸とは日本ではないのか。その問いは祖国復帰運動に対しても懐疑の目を向けさせ、反復帰論へとつながっていく。

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作家・大城立裕は復帰の年、1972年に刊行されたこの本の中で、戦後の祖国喪失に「すっきりしたような気持ち」を吐露する。「沖縄口を自由に話すことがゆるされる/この喜びほどは、アメリカ人にもヤマト人にもわかるまい」と明治後の方言弾圧の歴史と皇民化運動に言及している。

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国家を否定し、沖縄は日本とは異質な土着の文化の中で進むべきだと展開したのが新川明である。「みずからの血の中に日本(人)の血が流れているという事実を意識することさえ、耐え難い恥辱であった」。新川の身を削るほどの切迫感がここにある。

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「喜びはむろんのこと激しい怒りさえもわいてこない。何となくしらけきった空虚と、とらえどころのない憂うつがあるだけだ」と復帰のその日をつづった岡本恵徳は、沖縄戦における共同体のありようとして集団自決をとらえ、その延長として祖国復帰運動を問い、共同体意思のありようを模索した。

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ともに1947年に生まれ、南大東島で育ち、本土で学んだ体験など共通する点の多い仲里効と高良倉吉の二人が沖縄について30のテーマで論じ合う。歴史を背景に国家を糾弾する評論家の仲里と国家における沖縄に役割を求める歴史家の高良による激論集。

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沖縄の戦略的価値は基地の自由使用にあった。返還交渉は自由使用に重点をおく米側のリードで進み、日本政府の関心は「形式を重んじる面子だけであった」。研究者の分析は国家エゴを浮き彫りにしていく。

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沖縄の近現代思想史研究に大きな足跡を残した屋嘉比収による一冊。沖縄戦の体験者が減るなかで、「非体験者である私たち」がどう「当事者性」を獲得していくことができるのか。沖縄を「学びなおす」ことへの考察を深めてゆく。

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内容は沖縄が抱える基地問題や戦争体験、言語、ジェンダーなど多岐にわたる。その中で「基地の県外移設」を主張し、「引き取り」を日本人に求める。沖縄を植民地と位置づけ、植民地主義を乗り越える行動を日本人と沖縄人の双方に投げかける。

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1963年生まれの新城和博にとって、「雪が降る」と信じていた復帰は「モノクローム」だ。1972年の沖縄復帰から現在まで、〈復帰後〉の沖縄の印象的な出来事を社会風俗から時事問題まで硬軟織り交ぜて語った随想録。

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