沖縄の絵本を知るための
10冊
選定書籍一覧
(山内 淳子・選)
沖縄をテーマに出版された絵本を調べると、平和・戦争に関する本、自然・行事に関する本の多くが保育士や教師たちによって書かれていた。日本復帰後も先生方は中央志向ではなく、沖縄独自の教育実践を目ざし、自ら観察した自然や収集した民話・体験談等で得た喜びや感動を子どもたちに語り、伝えたいという思いで制作したのである。今回選んだ10冊は大人が子どもたちに語り、お話を共有することに視点を置いて選んだ。

山内 淳子 (やまうち・じゅんこ)
1952年宜野湾市生まれ。
宜野湾市学校図書館司書として36年間勤務。
2017年~2019年宜野湾市民図書館館長、2020年からは那覇市立繁多川図書館業務責任者。県子どもの本研究会副会長、県子どもの読書推進会議委員などを務める。

(資料提供:沖縄県立図書館)

島々の声を聞く
『マブニのアンマー おきなわの母』マブニのガマで戦死したという息子の骨を探し続けるアンマー、マツさん。やがてマツさんはガマで無念の死を遂げた骨たちの心の声と会話できるようになる。ガマに通い続けて11年目のある日、マツさんはついに息子の骨を見つける。わが子を戦争で亡くした母親の思いがあふれ、平和への願いが描かれる。本書は絶版となるも2005年、学校司書や沖縄県子どもの本研究会の熱心な復刊要請や署名活動などにより復刊された。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

『おきなわ 島のこえ』は、『沖縄戦の図』の画家、丸木俊・位里夫妻が戦争の真実の姿を子どもたちに強烈に語りかける。「小さい人たちに見てもらい、読んでもらって、戦争というものがどんなに酷いもので人間が人間を殺し合うなんて、これほど世の中でいけないことはないということをみんなで考えてもらうために」丸木夫妻が戦争への怒りと鎮魂と平和への願いを込めて送る絵本。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

『海を歩く 海人オジィとシンカの海』。「ハイ!エビ、持っていかんかー」船着き場にとくしょうオジィの元気な声が響く。7歳の時から海を歩き始めて70年。オジィは島の漁業のこと、海の生き物のこと、人生のことをいろいろ教えてくれる。沖縄の伝統的な追い込み網漁を続ける海人オジィとシンカ(仲間)の漁の様子と日常を伝える。美ら海と共に生きる海人たちの海の時間を描いた写真絵本。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

『ノグチゲラの親子』。「やんばるの森」にはこの地域だけでしか見られない貴重な生き物たちがたくさんすんでいる。「やんばるの森」にだけすむノグチゲラ親子の子育ての様子と巣立ちまでを描く写真絵本。ノグチゲラはイタジイの木に巣を作る。暴風雨や蛇やカラスなど天敵からひなを守り、無事巣立ちを迎える子育ての様子を貴重な写真で語る。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

島の誇りを伝える
『エイサーガーエー』は、道ジュネー、チョンダラー、パーランクー等エイサーの歴史や踊りがわかりやすく描かれている。彩り豊かな版画から力強いエイサーの熱気が伝わり、心躍る。生涯に渡って沖縄の自然と人々を描き続けた儀間比呂志氏は『ねむりむし じらあ』(1970年、福音館書店)を出版して以来、多くの子どもたちへ「沖縄の心」を語ってきた。その集大成として『儀間比呂志 絵本の世界1971〜2000 ニライ・カナイへの夢』(2001年、海風社)が出版されている。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

『ちいさな島のおおきな祭り』は、竹富島で旧暦9月に行われる「種子取祭」を紹介した絵本。多くの神事と共に80以上の演目が奉納される種子取祭は島民の誇りの祭り。キョンギンと呼ばれるお芝居に初めて出演するなつみもお兄ちゃんと一緒に練習に励む。祭りの準備、奉納される踊りやお芝居の練習に島のみんなが取り組み、子孫繁栄や豊作を願う種子取祭と島の暮らしぶりが生き生きと描かれる。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

『いのちのまつり』は、初めて沖縄にやってきたコウちゃんと島のおばあの会話を通して、たくさんのご先祖様の存在を知ることができる絵本。「数えきれないご先祖様が誰一人欠けても、ぼうやは生まれてこなかった、という事さぁ~」。自分が生まれた事の奇跡、命の尊さ、命のつながり、ご先祖様への感謝の気持ちをわかりやすく、しかけ絵本で伝える。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

『しまくとぅばであそぼう』。むすんでひらいて」をしまくとぅばで歌ったり、指あそび、数え歌、なぞなぞ、早口ことば、まりつきうた、おまじない、動物の鳴き声等、普段耳にしないしまくとぅばが満載。親子で言葉のリズムを楽しみながら遊べる。全ページに柔らかなイラストが描かれ、絵本の世界へ誘う。しまくとぅばの文化を大切に残し伝えていきたい。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

家族や地域の絆
『さとうきび』は、冬の風物詩、石垣島でのサトウキビ刈りの様子が描かれる。家族総出で夜が明けないうちから準備に取り掛かる。キビの花を切る、斧(おの)を打ち下ろして根元を切る、葉を落とす人、束ねる人、みんなで手分けして作業をする。おじいちゃんがサトウキビの食べ方を教えてくれた。皮をむき、芯をかむと甘い汁が口いっぱい広がる。ユイマールで行われる農作業を通して家族、地域の人々の結び付きが描かれる。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます

『歌うの大好き♪ミミクジラ~』。沖縄タイムスの子ども向け新聞に毎月1回掲載される「ワラビー読み聞かせ劇場」が70話を超えた。毎回、しまくとぅばのキャラクターが登場する創作物語だ。この本は、これまでの作品の中から最初に発刊された絵本で、耳が遠くなってきたおばあちゃんと孫の会話がほほえましく、読み聞かせの場でも子どもたちに大うけの場面である。「ミミクジラー」と言ったとたん、気が付くと洞窟の中、そこはおばあちゃんの耳の中だった。ミミクジラーの出現でおばあちゃんを理解する孫。読み聞かせを通して親子で島くとぅばについて語り合う機会にしてほしい。表紙裏のしまくとぅばは子どもたちと歌あそびやクイズにして楽しめる。

この本の全国各地の図書館所蔵状況を確認できます