沖縄の染織を知るための
10冊
選定書籍一覧
(與那嶺 一子・選)
沖縄の染織の特徴は、亜熱帯の植生を活かした多様な技法である。芭蕉布や上布は今も手仕事で繊維を採取し布を織る。また、リュウキュウアイ、シャリンバイ、ヤマモモ、フクギなどで鮮やかな色を染める。技法は、縞、絣、花織、絽織など、紅型など様々である。さらに近世の貢納制度により、宮古、八重山の上布、久米島の紬、那覇の木綿絣など、地域の特色ある染織がはぐくまれてきた。これらの染織は王国の崩壊、近代化、沖縄戦、米国統治の時代も伝統は継承され今に至っている。
沖縄の染織を記した文献は、15世紀の「朝鮮王朝実録」に始まる。明治から昭和初期には、染織史的研究、染織の技術研究などの報告にも現れる。また、戦後から復帰前後には、作品集も出版されている。沖縄の歴史・文化や沖縄研究に関する10冊の紹介という依頼を受けたが、取りあえず、私の本棚から、心動かされた本を選定してみた。

與那嶺 一子 (よなみね・いちこ)
1959年沖縄県与那国町生まれ。琉球大学教育学部美術工芸科卒。
専攻は染織。
沖縄県立博物館。美術館主任学芸員(美術工芸部門担当)。琉球大学非常勤講師。
著作に「琉球紅型」(2005年、青幻舎)、「沖縄染織王国へ」(2009年、新潮社)など。


「今時こんな美しい布はめったにないのです。」このリード文は、人の心を掴んで離さない。2016年に松井健の解題が附された復刊本は『芭蕉布物語』の背景や、その後も知ることができ、さらに深い読み物となっている。

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柳宗悦と共に1939年に来沖した型絵染の芹澤銈介による一冊。紅型が沖縄でどのように育まれたのか、芹澤なりの解釈が述べられている。職人からの聞き取り、文献の調査、この地の風物を体感し、まとめられている。内容も良いが、さし絵が素晴らしい。

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1921年、沖縄女子師範学校の教諭として赴任した鎌倉は、琉球芸術の研究を始める。同書は染織だけでなく、琉球文化の背景を知る格好のテキストである。
鎌倉が撮影した乾板写真は、大正から昭和初期にかけて撮影されたもので、細部までクリアで美しい。

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素材、色材、織り方、ここには沖縄染織の全てが詰まっている。戦前、民藝の沖縄調査に加わった田中は1952年志半ばで亡くなったが、同書は夫人と友人らによって世に出された。織物研究をする者には必須の本である。裂地図録との二冊組。

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戦争を生き延び、各界で活躍する人々が人生の軌跡を語ったシリーズ。第6集では紅型の城間栄喜、第6集では琉球絣の大城カメが戦前から戦後復興までを語っている。ゼロから再出発した方々の言葉には、時代の重みと力強さがある。

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1979年から2ヵ年に渡る沖縄調査を経て出版された。来沖した印象を「日本に失われたものがある」と述べている。取材は与那国島から沖縄島、そして奄美大島までの琉球弧全域に及び、これも50年前を知る貴重な冊子である。

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大城志津子は民藝の柳悦孝に師事し織物を始めた。その仕事の集大成として刊行された作品集である。染織の多様な世界をみせ、転生の美と評されたが、大城は当時病床にあり、志半ばで出版の翌年他界した。

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ドイツのベルリン国立民族学博物館で保管されている琉球王国時代の貴重な染織物について祝嶺恭子が調査した報告書。1884年に収集された染織コレクションの全容が掲載されている。同コレクションは年代や階級が明らかで、基準作例となる重要なものであった。

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琉球王国の三司官を務めた伊江朝睦の1748年~1816年にかけての日記など。任地に旅立つ者に手拭を持たせたり、塩豚を運ぶ際に御辻(掛袱紗)を掛けたりすることなど、当時の士族の暮らしぶりを通して当時を知ることができる。

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2016年にアメリカのジョージ・ワシントン大学博物館・テキスタイル博物館で開催された沖縄県による海外初の紅型展の図録。全て英文である。紅型だけでなく、沖縄紹介の一助となるように沖縄の自然、歴史、文化も紹介されている。

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