沖縄の焼き物を
知るための11冊
選定書籍一覧
(倉成 多郎・選)
人類は長い歴史の中で、土で形を造り、加熱して固化させ器として使用することを開始する。この技術は時代とともに複雑化し、高度に洗練され、現代では「陶芸」とも呼ばれる。
沖縄の焼き物は、島国ゆえに島内に産する原料だけでつくられてきたユニークな焼き物である。七千年前からはじまる長い土器の時代を経て、14世紀の海外産陶磁器の大量輸入時代の絶頂期を迎えた後、薩摩藩経由で朝鮮系窯業技術が導入され、また独自ルートで中国の窯業技術を学び、さらに九州産陶磁器製品も反映させながら、製品を作ってきた。しかも、海外への輸出は念頭におかれず、王国内の需要に応える形で独自に発展してきた。この極めてユニークな沖縄の焼き物を研究する博物館学芸員として、ぜひ多くの方に焼き物に興味を持っていただき、手にしていただき、使っていただきたいと願っている。今回は、21世紀に入って出版されたものを中心に、焼き物をよく知ることができる書籍を紹介したい。

倉成 多郎 (くらなり・たろう)
1971年生まれ。
那覇市歴史博物館主任学芸員。
岡山大学大学院修了(日本美術史)。
2001年から那覇市立壺屋焼物博物館に学芸員として勤務。専門は近世・近代の沖縄窯業史。2017年から現職。


焼き物は、土器・陶器・磁器・セラミックなど様々な種類があり、歴史や作り方、焼き方も様々で、興味をもってもすぐに戸惑ってしまうかもしれない。那覇市立壺屋焼物博物館の展示会図録『やきものの不思議ふしぎ』は、焼き物の種類や作り方、焼くための窯の構造や釉薬の種類についての初歩的な基礎知識をわかりやすく紹介している。

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また、矢部良明監修『増補新装〔カラー版〕日本やきもの史』は、フルカラーで日本列島の焼き物の歴史を土器から現代作家まで一気に把握することができる。この基礎知識さえあれば、戸惑うことも少なくなるだろう。

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沖縄の工芸の中で、焼き物(ヤチムン)ほど人々から愛された工芸はない。まずその美しさに触れるために、沖縄の焼き物の写真集を紹介したい。戦後沖縄では公立博物館の整備が遅れ、現在も各市町村立の博物館は十分な資料購入費を確保できていない。そのため沖縄では分厚い個人コレクターの層が資料の保全に努めてきた。優れた沖縄の焼き物は個人所蔵になっている場合が多い。21世紀に入って個人蔵コレクションを紹介する書籍がいくつも出版されてきた。全てを紹介することができず申し訳ないが、古美術観宝堂『沖縄の古陶』、宮城篤正監修『琉球の酒器 翁長良明コレクション』、垣花隆夫『琉球の古陶 その美と流れ』は美しい写真集となっている。

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沖縄の工芸の中で、焼き物(ヤチムン)ほど人々から愛された工芸はない。まずその美しさに触れるために、沖縄の焼き物の写真集を紹介したい。戦後沖縄では公立博物館の整備が遅れ、現在も各市町村立の博物館は十分な資料購入費を確保できていない。そのため沖縄では分厚い個人コレクターの層が資料の保全に努めてきた。優れた沖縄の焼き物は個人所蔵になっている場合が多い。21世紀に入って個人蔵コレクションを紹介する書籍がいくつも出版されてきた。全てを紹介することができず申し訳ないが、古美術観宝堂『沖縄の古陶』、宮城篤正監修『琉球の酒器 翁長良明コレクション』、垣花隆夫『琉球の古陶 その美と流れ』は美しい写真集となっている。

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沖縄の工芸の中で、焼き物(ヤチムン)ほど人々から愛された工芸はない。まずその美しさに触れるために、沖縄の焼き物の写真集を紹介したい。戦後沖縄では公立博物館の整備が遅れ、現在も各市町村立の博物館は十分な資料購入費を確保できていない。そのため沖縄では分厚い個人コレクターの層が資料の保全に努めてきた。優れた沖縄の焼き物は個人所蔵になっている場合が多い。21世紀に入って個人蔵コレクションを紹介する書籍がいくつも出版されてきた。全てを紹介することができず申し訳ないが、古美術観宝堂『沖縄の古陶』、宮城篤正監修『琉球の酒器 翁長良明コレクション』、垣花隆夫『琉球の古陶 その美と流れ』は美しい写真集となっている。

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沖縄では約七千年前に土器の生産が始まり長く土器の時代が続く。1616年に薩摩藩を介して朝鮮系窯業技術が導入され本格的な窯を使った陶器生産が開始される。1682年には現在の那覇市壺屋に琉球王国内の複数の窯と工人が集約され、現在まで続く壺屋焼の生産がはじまる。近代では琉球処分、現代では沖縄戦という大きな時代の転換点で苦難に立たされながらも、ヤチムンは沖縄に生きる人々と密接に関わりながら歩んできた。
焼き物は勝手に生まれてくるわけではない。焼き物を必要とする経済的な状況があり、焼き物を必要とする階層が誕生し、また焼き物以外の美術工芸品とも連携しながら歴史の中に登場してくる。沖縄考古学会が編集した『南島考古入門』は、現時点で最新の考古学の知見を利用し、沖縄で焼き物が生まれた歴史的環境を解説してくれる。また宮城篤正監修『すぐわかる沖縄の美術』では、焼き物だけでなく沖縄の美術と工芸について、豊富なビジュアルを使いながらまとめられている。さらに、1998年にオープンした那覇市立壺屋焼物博物館は沖縄の焼き物に特化した博物館としていくつもの展示会を開催し図録を発行してきた。展示会図録では、近世から現代までの沖縄の焼き物の歴史を分かり易く解説している。

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また拙著『壺屋焼入門』は、17世紀から始まる窯を使った本格的な陶器生産、特に壺屋焼について近世から戦後、現代まで、できるだけわかりやすく記述したものである。

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壺屋焼の陶工・金城次郎は1985年に沖縄の工芸の作り手として初めて人間国宝に指定された。その作風は、それ以後の壺屋焼のイメージに大きく影響を与えている。金城次郎という唯一の陶工がなぜ生まれたのか、彼の作品はなぜ美しいのか、この問いに取り組んだのが文化人類学者でもある松井健である。著作『金城次郎とヤチムン 民藝を生きた沖縄の陶工』では、金城家との長い関わりから得られた貴重な聞き取り情報にも依拠しながら展開される作品論はスリリングである。

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また、金城次郎の1950、60年代、彼が40代の働き盛りの時期の作品を集めた上村正美監修『壺屋十年 金城次郎雑器の美』は、現在活躍する多くの陶工が影響を受けた作品集である。

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比嘉慂の『マブイ』は沖縄に関わる短編漫画を集めた作品集である。その中の一編に、二人の陶芸家が描かれる。実在する陶芸家から着想を得ているが、史実はどうあれ、美しい焼き物に取りつかれた陶芸家の本質を見事に描き出していると思えてならない。ちょっとした休憩にでも、ぜひ一読をお勧めしたい。

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最後に。華道家である川瀬敏郎が、器に生けた花を写真と文章とで紹介する『今様花伝書』は、私にとっては衝撃だった。器が美しいのではなく、すべての器が美しく使われていた。器を美しく使うということへ意識を向けさせてくれる本である。手にした器を、ひとつでもいいから美しく使ってあげたいと思う。

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